「ワークシフト」シフトできる人はどれだけいるか

電子書籍で読んだ「ワークシフト」
第2部では「漫然と迎える未来」の暗い現実と題して、グローバル化、テクノロジーの進化によって時間に追われ続け、孤独にさいなまれる日々を送らざるを得ない生活が描かれている。さらに次の第4章では先進国の住人であっても貧困層に落ちてしまうこともあると示唆する。
第3部以降で「主体的に築く未来の明るい日々」としてグローバル化やテクノロジーの進化を上手に受け止め、利用する生き方が紹介される。
自分も含め多くの人は3部以降にでてくるような明るい未来を築きたいと願うだろう。しかし、著者自身も「シフト」を成し遂げるのは簡単ではないと書いているように、明るい未来へのハードルはずいぶん高い。2025年に3部以降に出てくるような明るい未来を生きている人はおそらく少数派だ。

そしてこの類のビジネス本でいつも気になるのは収入減になっても好きな仕事や自分の家族を大切にする人が増えていくという話である。先にも書いたように多くの人は貧困とまでは行かずとも十分な収入を得ることに汲々とするのが普通だ。「収入を減らしててもいい」人はそれ以前、かなりの高収入で減ったとしても貧困層レベルにまで落ち込む人は少ないはずだ。
身もふたもないことをいえば、この類の本は現時点ですでに恵まれた位置にいる人のために書かれている。ドラッカーのタイトルを借りて言えば「既に起こった未来」というわけだ。
それならば暗い未来が待っていそうな多くの人へ向けてそれでもなんとか生きていく本が必要な気がするが、そんなものを書く人はいないだろうか。